テレビ朝日のアナウンサーとして活躍後、オリジナルフラワーブランド「gui(グイ)」を立ち上げ、フラワーアーティストとして活動されている前田有紀さんにお話を伺っています。
前半では花屋に転職された経緯や他業界とのコラボについてお話いただきました。
後編では2021年4月にオープンしたguiの姉妹ブランド「NUR(ヌア)」や子どもを対象としたワークショップ「花の教室」について詳しく伺います!
NURは世界に一つだけを届ける花屋
2021年4月に東京・神宮前にオープンされた「NUR」はどのようなお花屋さんなのでしょうか?
NURでは、「NURの作り出す世界は唯一のもの」をコンセプトに、その人らしい世界に一つだけのお花を届けることを目指しています。わざわざNURに来ていただくからには、見たことがない咲き方をしている花と、面白い色合いをしている花を組み合わせて、世界に一つだけのお花をお渡ししたいと思っています。そのため、仕入れにもこだわっていて、私も朝5時頃には市場に行き、お花を吟味して仕入れているんですよ。NURでは唯一無二の花の世界観を表現できたら良いなと思っています。
NURの世界観を表現するために、こだわっている点はありますか?
こだわりの一つが、一点物のヴィンテージの花瓶にお花を生けてディスプレイしている点です。一点物の花瓶とお花を組み合わせることで、世界に一つのデザインになっているんです。日本だと花瓶は機能性重視のシンプルなものが多いのですが、NURで置いている花瓶は、アメリカやヨーロッパで仕入れているブランドさんのものも多く、代々様々な人が手にしてきた歴史も感じられるんです。
同じ花でも花瓶が違えば表情が違って見えることがよくあります。想像力が働くような花瓶を多く揃えているので、色々想像しながら選んでいただけたら嬉しいですね。
NURで開催してみたいイベントはありますか?
花と花の外の世界を結びつけるイベントをやりたいと思っています。直近では、ジュエリーブランドさんとのコラボでジュエリーの展示会や、イラストレーターさんが描いたお花の絵を飾る展示会は開催が決まっています。
どうしても、「記念日やプレゼントに買うタイミング以外だとちょっと花屋は行きづらい」と感じる方もいると思うんですね。ジュエリーの展示会のように、花と花の外の世界を組み合わせたイベントを開催することで、花屋のハードルを少しでも下げられたら良いなと考えています。
移動販売「gui」とはまた違う魅力をNURでは発信されていくんですね!
そうですね。お客様の層としても、guiはお店の軒先をお借りして、毎回違う場所で花を販売しているので、普段はわざわざ花屋に入らない方も立ち止まってくれるんですね。一方、実店舗であるNURは、お花が好きな方がNURを目指して来てくださります。そのため、私達としても、お花の世界を広める場であるguiと、深める場のNURという2つの柱ができたと感じています。guiとNUR、それぞれの場で自分たちもお花と向き合いながら、花の魅力を発信していきたいですね!
子どもたちがお花に触れる体験を届ける
2021年6月に初開催された、子どもを対象とした「花の教室」はどのようなワークショップなのでしょうか?
6月の「花の教室」では、参加した子どもたちには、キャンパスに自由に絵を描いてもらい、その上に様々なお花を散りばめて、作品をつくっていただきました。
この投稿をInstagramで見る
ワークショップで使うお花は売れ残ってしまった花材などを中心に使用し、参加費用を抑えつつ、ロスフラワーを少なくする工夫をしている
子ども達はみんな楽しそうで、私も嬉しかったですね。私自身、普段子ども達へは「壊れちゃうからお花は触っちゃダメだよ」と言ってしまうのですが、今回のワークショップでは「どんどん触って」と言
えました。お花と直に触れ合う機会を提供できたことも良かったなと思っています。
子ども達の中にはなかなかお花を直接触る機会自体が少ない子もいますよね。
そうなんですよね!今回のワークショップでは、ほっぺたで花の感触を確かめる子や花の色んな部位を触ったりする子もいました。こうした体験を通じて、花という存在が子ども達にとってもっと身近なものになって、そして大人になったときに、ふと「お花を飾ろうかな」と思ってくれたら嬉しいですね。
たしかに、子どもの頃に体験したことが大人になってから、ふと思い出すことってありますよね。
お客様のなかにも「子どもの頃、母が花を飾っていたのを思い出して、最近飾りたくなったんです」という方もいらっしゃるんですよね。そういう意味で、実体験は大切だと思います。
あと実はワークショップ以外にも、「子ども達がお花に見たり触れたりする機会を増やしたい」という思いから、鎌倉と東京の児童養護施設にお花を寄付しています。寄付したお花は児童養護施設のエントランスに飾っていただいたり、届けたタイミングに子ども達がいれば、実際に触ってもらったりしているんです。現在は鎌倉と東京の2つの児童養護施設にお花を届けていますが、これから寄付させていただく施設を増やしていきたいな、と考えています。
今後はどれくらいの頻度で「花の教室」を開催する予定でしょうか?
月に1回くらいはやりたいと思っています。今後は様々な内容のワークショップを開催していきたいですね。例えば、紙でできた花瓶に絵を描いてオリジナル花瓶をつくってもらったり、クリスマスの時期はリースを一緒につくるワークショップも良いな、と思っています。コロナ禍が落ち着いたら、たくさんの人数でやりたいですね。
日常に花が根付いている未来が見たい
今後の展望をお聞きせください。
guiとNURの活動を大切にしていくのはもちろん、花の教室や児童養護施設への寄付など子どもを対象にした活動を柱の一つにしていきたいです。40代の10年間は地域の子ども達のための活動を増やしていきたいと思っています。
どうして40代の10年間は地域の子ども達に向けた活動に力を入れたいと思われたのですか?
30代は転職と起業を経験し、今の事業を回していけるようになるのに必死でした。生花店の先輩や農家さんや市場関係者の方など多くの方々にお世話になりながら、なんとか30代を終えたところで、「40代は何をしていきたいかな?」と考えたときに、「これまでお世話になった花業界の方々へ恩返しをしたい」と思ったんですね。
「じゃあどのように恩返しをするか?」を考えたときに、「花業界がこれからも続いていくように活動すること」が恩返しになるのではないかと思いました。
そこで、児童養護施設への寄付や花の教室などを通じて、子ども達にお花の魅力を伝えていければ、その子ども達が大人になったときに、お花に少しでも興味を持ってくれるのではないか、と考えました。そしてそれが、花の文化が残り、発展することに繋がってほしいと願っています。
子ども達が大人になった頃にも花の文化を残したい、今よりも発展させたい・・・すごくかっこいいと思いました!
自分が80歳のおばあちゃんになる頃には、日本中の人たちが家で花を飾ったり、人と会うときに花をプレゼントしたりするのが当たり前になっていて欲しいですね。花がもっと暮らしの中で身近になっている未来をこの目で見てみたいと思っています!
最後に、神奈川イベントプラスの読者の皆さんへ、メッセージをお願いいたします。
神奈川イベントプラスさんでは色んなイベントが開催されていますよね。近くのイベントに参加してみたり、地域にどんなイベントがあるのか調べてみたりするだけでも、楽しいと思いますので、これからイベントプラスさんを利用していただいて、思い出をたくさんつくって欲しいなと思います。
取材を終えて
正直、筆者はこれまでお花に接する機会に乏しく、最寄り駅にある花屋さんを見かけても、「色んな花があるんだぁ~」とたまに思う程度でした。ただ今回の取材で、前田さんの花を語る目の輝きや花に対する情熱に触れてからは、「前田さんがここまで語る花の世界に触れたい」と思うようになり、一輪だけですが花を買ってみることに。花が一輪あるだけでも、部屋がとても明るくなりました。買って良かったです。
また、取材では前田さんが「これからしたいこと」をポンポンと答えていたのが印象的でした。「好きなことを仕事にしている方は、やりたいことに溢れているんだな」そんなことを思いつつ、自分も好きなことを探し求めていこうかな、という思いました。
前編のインタビュー
→詳細はこちら
インタビュワー:庄子 鮎
カメラマン:鶴岡悠子